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巡回

高山(と呼んでいる場所)は昨日おかんが摘みながら巡回したので、
それ以外の果樹園全体を巡回。
摘み残しがないか、どの樹が明日摘み頃になるか、摘み頃が近日中なのはどの樹か、
などなど、チェックして一本一本の生長具合を頭の中(おとんのね!)に入れる。

果樹園の碧螺春は茶園の茶樹ではないので、龍井のように畑の場所ごとに摘むわけではない。
複合果樹園全体の中に共生している茶樹の、摘み頃の芽だけを摘む。
毎日果樹園のほぼ全体を移動しながらの茶摘となる。
今日はここ、明日はあそこ、ではない。
だからこそ、日によって少しずつ香りや味わいの複雑さが違い、
茶園では作れないような素晴らしい碧螺春が毎日毎日生まれる~♪

『愛子。ちょっと来てごらん。』
「はーい。」

『この樹はすごく好い老品種だ。 見ろ、この芽の形! 美しいだろ~♪』
「ほんとだー。理想的な姿している! これは摘みやすそう。」
『このまま生長しても開かないんだ。隣は味は好いが発芽後すぐに開いちゃうからな。
こいつは好いやつなんだ。味もいいぞ。食べてごらん。ほら。』
「うわ、香り好い。これ、あまいねー。」
『だろ。』

 
『この樹を今年はもう少し大きくして、枝を増やすぞ。
ここ辺りからこうやって地面に埋めて株を大きくして(中略)、そうすれば来年はもっと量が多くなるぞ。
明日くらいから少し摘めるな。』

「あれ?これは?」
『ああ、それが一番早く発芽する新品種だ。全部摘まれてから時間も経っているだろ?』
 
「ほんとだ。葉が違うね。きっと苦いんじゃない?」。。。摘み残し発見、ぷちっ、もぐもぐ。

「あれーーー、苦くないね。どっちかって言うとあまい印象の方が強い。」
『苦くないだろ。それは新品種でも最近の品種、形も味も好いからって、高かったからなぁ。』
「あははー。」

「え・・・。おとん、改良品種作るの?」
『するわけないじゃないかーーー。それも研究用に一株買ってみた。』
「よかった♪」
『心配するな。この村ではな、100%伝統品種だけで製茶している家は俺んとこ一家だけになったんだ。』

「うそおーーー?!」
『誰が嘘つくかよ。自分で見てみればわかるだろ。』
「昨年はまだ何家かいたじゃん。その人たちも?」
『そう、だんだん新品種を増やしている。老品種と半々という家が今はほとんどだ。』

「老(伝統)品種と新(改良)品種と、彼らはちゃんと分けて製茶してる?」
『するもんか。事前にそういう要求がなければその日の分は混ぜて炒るに決まっているだろ?』
「分けないの?」
『そんな面倒なことする家はないよ。碧螺春でそれをするのは現実的に難しいだろ?
それに老品種として全部売ったほうが高値がつくだろ。
100%の老品種なんて量が少なすぎる。
新品種を混ぜたほうが生産量が多くなるし、外形がきれいに見えるから売りやすい。
それにな、混ぜたって飲んでそれを分かる客なんか普通はいないぞ!』
「そうか・・・。そりゃそうだよね。あはは~。』

 これは明日だ!

『愛子~。帰ってご飯食べよー。お腹空いて死にそうだよぉ~~~。』
「好~。回家了~♪」

帰り道。村の中。
軒先で茶苗の準備している人発見。
おとんを呼んでいる。
 好い茶苗の選び方等、伝授中のおとん。

こういうとき、おとんは本当に夢中になって楽しそう~♪
お腹空いて死にそうだったんじゃないのかなぁ~?(笑笑)

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