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夢のような歓喜と血の気が引く苦悩

11秋鉄《心の隊員》のみなさま、すみません、しばらくご報告なしでした。
お蔭様で無事に帰国し、体調崩すこともなく不在中に溜めたあれやこれやを先に片付けていました。

書きたいことがたくさんあるのですが、山から下りた後と帰国後は、ちょっと書けなかった。
時間的な問題もあるけれどそれはいつものことで、そんなことよりもこの秋は、
歓喜と苦悩が両極端すぎて、そのギャップが大きすぎて・・・。
気持ち的に、なのかな、、、言葉が出てこなくて、ここまで書けなかった。

いざ書こうとすると、茶葉に関してはそれこそどれもが興奮する仕上がりで
嬉しくて伝えたいことが爆発的にたくさんあって全部書きたくて気持ちが逸る、
けれど、製茶が終わって最期に突きつけられた現実的な問題がちょっと、かなり深刻で、、、。
喜びの内容のところを書こうとしても、深刻な苦悩がよぎって気持ちに陰りが出て、
その気持ちのまま書こうとしても無理で、書きたい内容に本気で没頭できなくて、
手放しで高揚感に入っていけなくて、本当に感じている喜びから離れてしまう。

感覚と精神がばらばらな感じになってしまっていて、何をどこからどう書きたいのか、、、。
ひとつひとつ書いていくしかない、言わなければ誰にも伝わらない、
黙っていてもみんなには分からない、そう分かっていても、私の心は未熟で、
書こうとしても考えてしまい、、、書けなかった。

《心の隊員》への返信も、どう言ったら好いのかなかなか言葉が進まなくて、
みなさまに待ってもらっている状態です。
初めての方以外、誰にもお返事していません、すみません。
単品ご希望の茶友も、お返事待っていただいています、すみません。
でも、お待たせいたしました!
今週中には順番にみなさまへお返事してまいります!!!
ありがとうございます、今少しお待ちくださいませ、お願いいたしますっ☆


まだ、どうしたらよいのかよく分からない。
けれど、まずは事実を伝えることから。


この秋は、「夢のような歓喜」と「血の気が引く苦悩」、そんなふたつの現実と直面しています。
多分これは、この先もこの活動を続けるなら、続くと思われる。

「夢のような歓喜」とは、今秋の茶葉。その仕上がり品質。
思うだけで体の底から高揚してくる。

おとんの製茶人生で初めてだそうだ、ほぼ全部がここまでの極品で揃ったシーズンは。
天候に恵まれたのは幸運だった。しかし、どんなに気候が好くても、一般的には全体の
60%が好茶に成功したらシーズンとして上出来だそうだが、今秋はほぼパーフェクト。
極品だらけだったために最初はひとつも極品がないと勘違いして落ち込みかけたくらいだ。
『ありえない、どうして今秋はこれまでとは違いこういう結果になったんだ』、と、
おとんは全く理解できない様子だった。
が、私には分かる。
だって、狙ってそうしたからだ。
やっとそれができるところに来れたからだ。
製茶前、私はおとんに「今秋から目的が違う、ここまでの3年とは違うよ。」と言った。
だが、そのときはまだ、おとんはその言葉の意味をまるで理解していなかった。
最期には分かることになるが。
今秋私は「毎日その日に作れる最高のおいしいお茶」を狙って作った。
これまでの3年間6シーズンの目的は、強いていうなれば「おいしいお茶を作るために」。
今秋の、今秋からの目的は、「おいしいお茶を作る」。
やっと、やっとここに来れた。。。そう、今秋やっと始まったのだ☆
この話は、これだけではきっと誰にも理解できない、単独製茶で4年目、長い話になる。。。いずれまた!

「血の気が引く苦悩」とは、製茶コスト。その急騰ぶり。
思うだけで今ももう倒れそうだ。

毎シーズン製茶後に、前シーズンからそこまでの茶園管理にかかった数ヶ月間の工人費用や
製茶時期の工人費用等の全て、つまり製茶コストをおとんと一緒に整理して最終算出するのだが、
今シーズンの茶葉にかかったコストは、昨秋の1.9倍・・・約2倍だ。
顔が引き攣った。
人件費と物価の急騰で、100g作るコストが昨秋の約2倍になったのだ。
隊員のみんなに分かりやすく言うと、昨秋に比べ《隊員セット》の茶葉が「約半量」になる、
昨秋と同じ量にするには1心を倍額にしないと入らない、2心分で昨秋の1心しか飲めない、
一番等級が低い茶葉でも最低でも倍額する、というイメージだ。
私個人は、この秋だけで3シーズン分の予算が一気に消えてしまい、来年の春と秋の分まで
使ってしまったことになり、本当に血の気が引いた。人件費も物価も上がり続けているため、
製茶コストの急騰はこれからも続くだろうし、日本で私がどんなに休み無くどんなに仕事を
詰め込んでどんなにがんばっても追いつくような範囲ではなく、来年が絶望的に感じられて、
どうしてよいのかわからず、安渓に下りてから体は疲れていたのに心が休めなかったのか、
2晩眠れず何度も金縛りにあった、辛かった。

伝承の手作りの製茶には、必ず労働力が必要になる。その人件費とそれに付属する物価
(食事交通費等)の上昇は、全国的に深刻で、特に昨秋から今年にかけての上昇率は
本当に恐ろしい。現在、各産地で茶葉は工業化され労働力に頼らずとも製造でき、製造工程も
大幅に省略短縮され、ローコスト大量生産の様々な工夫がされているが、非常に理解できる。
そうしなければ市場に茶葉など流通しない。国内の需要に供給が追いついていないし、
市場では廉価で現代的でブランドイメージのある黄色いパックの紅茶をお手本にしたような品質が
多く求められており、そういう時代の要求に合った茶葉を作らないと、生産者側は生き残れない。
茶葉に限らず、労働力と職人の技術が必要かつ生産性の低い手作り品は、全国各地から消えていっている。

伝承の伝統鉄観音を1球作るためには、一日に何十人もの労働力が必要になり、おとんも私も
できる限り工夫したり節約したりしているが、もうそんな程度でカバーできる状況ではない。
この秋は、茶葉だけ見れば手放しで喜んでいたふたりだが、この一年の物価と人件費の
上昇率はそんな湧き上がる喜びをストップさせてしまうほど深刻で、ちょっと笑えない。
例え失敗茶葉に仕上がっても、製茶する以上はそれだけの費用が必ずかかるのだ。
だからこそ、作る以上は真剣にもなるし最高に価値ある好い物を目指している。
もう数年前からそんな状況が続いていたし、今秋も日々工人と交渉して雇っているので
ある程度になることはふたりとも覚悟していたが、最終的な数字を見て、この秋私は、
本当に全身の血の流れが止まってしまったかのような感覚になった。

この先、一体どうなるのか。
このインフレは、普通に想像できるような範囲ではない。
何もお茶に限ったことでなく、今年は春節前と五一節前に国内で大きな値上げが2回あって、
全ての物価が急騰した。現在も、大げさでなく一週間単位でいろんな物の値段が上がっていて、
何もかもがあがる一方で、全ての人が先が見えず不安を抱えている。
この活動を続けるなら、私たちもこの状態は続く、というかますます深刻になると思われる。
来年以降どれだけ人件費が上がるか分らないが、下がることが無いことだけは分かる。

製茶中は、作ることに没頭しているし茶葉の結果に喜びで躍るように言葉が出てくるのですが、
いざ製茶も審評も終了するとそれを落ち込ませるほどの深刻な製茶コストの高騰に直面する。
このギャップ・・・。
まるで天国から地獄に突き落とされたようで・・・心が裂けそう。


これまでにも何度もこういう問題に直面してきたけれど、これまでとはちょっと違う気がする。
どうしたいかと自分に問えば、私は作れればいい、おいしいお茶を作るのが好きだ。
製茶量をもっと減らし、少しになってもいいから、本物の価値を感じる本当においしいお茶を作り続けたい。
そうして出来たお茶に、作った分だけでいいから、同じように価値を感じて一緒に飲んでくれる茶友と出会いたい。
多くは必要ない、製茶コストを払えるだけの予算が集まる仲間でいい。
各地のおとんたちも、そうやって計算してくれている。
だから私も、そうやって茶友に分けられている。
しかし、それでも茶友は減っていて、平行してコストは製茶量を減らす分以上に上がるから、
まったくバランスが取れていなくて、このままではもたない。それをカバーするために
これまでのように私個人が多少工夫したり日本で休まずに懸命に稼いだり、もうそんな程度で
どうにかなるような問題ではなくなった。

手作りのものには、どうやっても人権費が絡んでくる。
労働力を必要とするものは、これまでのような予算では作れない。


今月は、考えて考えて、これまで以上にものすごく考えていた。
何をやっていても頭から離れることは無く、ずっと考えていた。
考えてどうにかなる問題と、考えてもどうにもならない問題があるけれど、
この先も作りたいのなら、今考えなければ、今こそ根本的に考えなければ。。。どうしたらいいんだろう。


うん、ここまで言えた。
なんかちょっとすっきりした。
みんなに話せて、雲の層が少し薄くなった感じ、かな。
遅くなりましたが、とりあえず状況のご報告でした!

《心の隊員》のみなさま&その他の茶葉ご希望の茶友のみなさま!
今週順番にお返事と発送準備進めていきますので、待っててくださいね。お願いしますっ♪

Comments:2

蝦餃(はーがう) 2011-12-02 (金) 13:14

やはり状況はさらに厳しく・・・
言葉がないというのが正直なところです。
困難な状況になっているだろうとは薄々察してはおりました。
言葉にすることの重さと難しさ、どうしたら私たち茶友も力になれるか・・・
お話してくださってありがとう。

愛子 2011-12-13 (火) 07:05

蝦餃さん!
コメントありがとうございます♪

時代の変化、市場が求めるものの変化。。。
飲む人がいないから、作られなくなっていく。 そのことを、痛感しています。

飲みたい人を探さなくては・・・本当にどうしたらよいのやら・・・。


それと、最近は、むしろこれまでに感謝すべきなのだと、強く感じています。

これまでが安かった、安すぎた。
だから私達は飲めていた。

今は、正常に近ずきつつある。
というのが、正しいのかもしれない。

もしも、このサイトで紹介しているような作りの茶葉を、
日本や他の先進国で生産したらと考えたら?
そこにかかるコストを単純に計算しただけで、とんでもない金額になります。
やろうとしても、あまりに途方も無くて、非現実的で、想像がつかないです。

だからこそ、現代でもそれが現存している中国の伝統茶に、私は非常な価値を感じていました。
その製茶に参加できることに、最後の作り手達に教わることができることに、
それを実際に飲めることに。。。

国が発展すれば、いつかはできなくなることが想像できるような、原始的な生産方法。
だからこそ、まだそれができることに感謝して、毎回作っていました。
そういう茶葉を、ずっと私達は飲み続けてきたのですね。

これまで長い間、人件費も物価も、日本とは比べ物にならないくらい安かった。
だからこそ、私達は飲めていた。
ここまで素晴らしい茶葉を。どれだけ安く。。。
そう思うと、今更ながらありがたく感じる、今日この頃です。

私たち、伝統茶の現役の最後の飲み手になるかもしれませんね☆
飲めるうちはこれからも一緒に飲んでいただけますか!!!
どんなに少なくなっても、実際に飲んでくれる仲間がいることが支えであり、茶友は希望の光です。 どうぞよろしくお願いいたしますっ♪

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