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ありがたくて、たまらない

もう作れないかもしれない。

もしかしたら、今春が最後。


山の上で、ひとり。
万感の思いを込めて、ひとりお茶を作っています。


おとんはいない、製茶所にいる。
初めて来た製茶工人も、一緒に焼火の手伝いで来た小紅も、遅れて上がってきたおとんも、
夕方来て、もうみんな帰った。
製茶中、おとんがこの家に泊まることは、もう無いのかもしれない。

一騒動あって、でもなんとか初日の炒茶を終えることができた、
だが、おとん、疲労困憊・・・戦意喪失。

気配を、感じてしまった。
多分、来るべきときが、来た。

 

昨夜に続き、今夜も超満天の星空が広がっている。
大門の外灯が切れて、外は真っ暗。
まるで10年前のように、眼下の星たちまで見える。

燃えるような暑い昼間とは逆に、澄んだ冷気に山が包まれる。
好茶を作るのに、絶好の条件日。

それにしても、今夜は本当に、なんという見事な星空なんだろう。
宇宙の向こう側から見たら、私もまたこの小さく光る星の一部。
この星のどこかで、今こうしてこっち見て、お茶作っている人、いるかな。
無数の星星たちが、静かに動いている。
吸い込まれそう。

さあ、やろう。
例え今日が最後になったとしても、まだ終わっていない。
今私の前に、今日摘んだ素晴らしい茶葉がある。
60年程前、おじいが初めて植えた苗、おじいの初代樹。


ひとり、茶葉を揺する。
鉄観音を作るために生まれたこの家と、使い込まれた道具たち、私のパートナー。

香りが生まれる、香りの中へ入っていく。
香りが動く、心が波を打つ。
家と茶葉と私。。。3人。

 

終わった。

夜の香り、家の香り、茶葉の香り。
そうか、これが最後かもしれないんだ。

揺すり終えた茶葉を、水篩で運び、竹笊に少しずつ広げ、木棚に並べる。
そうしているうちにも、香りは変化していく。
茶葉は、揺すった私の手に反応し、意志が生まれたように動いている。

竹笊に広げる度に、両手で茶葉を包み、香りを聞く。
ありがとう、ありがとう、と声が出ている。
感謝の思いが溢れる。
お茶に、人に、時代に、ここに繋がる全てに、その全てのめぐり合わせに。

例え今日が最後だとしても、感謝の想いしか出てこない。
なんと得難い時間だったのだろう。


ありがとう、ありがとう、ありがとう。
山の上の家でひとり、初めて、泣きながら鉄観音を作っています。
涙が、熱い。
ありがたくて、ありがたくて、たまらない。

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