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一瞬一瞬が、愛おしい

もう作れないと覚悟した今、これまでとは違う心持ちでいる。
お茶を作っているこの一瞬一瞬が、大切で大切で。。。愛おしい。

 

老茶樹、摘めたーー♪

晴れ、雲多い、風あり。
やった!春の老茶樹だーーーっっ☆

 

おとん、今日はご機嫌?
少し元気がある!
好かった。

昨日は最悪。
初めて雇った製茶工人が、手抜きだらけ、言うこと聞かない、勝手、雑、投げ出そうとする、
おとん、もう嫌で嫌で、心の中で爆発的に怒っていて、
でもなんとか続けてもらわないと、茶葉が台無しになるから、
なだめたり、気を遣ったり、で、・・・ぐったり・・・、
本気で嫌気がさして、ついに、
『もう停止しよう。』、本音で出た言葉。

 

山は今、深刻な労働力不足で、まったく工人が見つからない、
彼は『一般よりできる』らしいから、雇ってみたそうだが、
ところがどっこい、『一般』より要求は聞かない、態度は悪い、屁理屈が多く、最悪だった。
それでも、おとんが20人以上電話してやっと見つけた工人で、
他に候補は見つからなかった。

今日は違う工人。
過去に何度か来たことあるが、彼も不機嫌で態度悪く、手抜きが多く、技術的にも・・・。
が、『昨日の彼よりはまし』、とのことで、
それに、やっぱり他に候補は見つからないので、仕方がない。
ふたりで何とか、『彼のご機嫌を損ねないように』、工夫する。

彼はビールを要求し、おとんは用意した。
それで機嫌よくやってくれるなら、と。
仕事しながら酒飲むなんて、私にはありえないし、飲みながら茶葉作るなんて、やめて欲しい。
が、この辺りでは『他』はどこでも普通のことで(酒・タバコ・食事の準備)、
どの工人も普通に要求してくるし、皆そこに何の疑問も感じていない、
いや、感じていたとしても、それがまかり通っている。
もしも断ったり叱ったりすれば、余計雑になる、ぷいと出て行くか、二度と来なくなる。
ひどい時は、腹いせに後で報復にやってくるので、危険。
出て行かれたら、再びおとんが骨を折って探すことになるが、代わりが見つかる確率はかなり低い。
見つからなければ、茶葉は仕上がらず、すべてゴミになる。

 

おとん、今日は木棚の茶葉の香りを聞いて、喜んでいる!
久しぶりだなあ、そんな姿♪
嬉しいなあ。
心に平和が訪れているのだろう。
ひとまず、好かった。
体調も悪くなさそう、本当に好かった。
本当は、落ち着いて一緒にきゃあきゃあ作りたいんだろうなあ。

それにしても、ただでさえ健康面に不安があるところに、
客人問題で『お茶どころじゃない』、
工人問題で更に『お茶どころじゃない』。
お茶作っている人間が『お茶どころじゃない』って状況・・・、どうなんだろう。
今に始まったことじゃないし、ここだけの問題じゃないけれど・・・、
近年ますますひどくなっていく。

今の最大の問題は、もう資金とかじゃない。
「好いお茶を作る環境」が、作れなくなっている。

 

おとん、客人が来るから、自分はこの家に滞在せず、製茶所にいる。
私が少しでもお茶作りに集中できる環境を作るためだ。
誰かから連絡あっても『お茶はもう作っていない』、『山にはいない』、『製茶所にいる』と。

工人の手配(採茶工人・製茶工人の両方面)で、朝から晩まで電話して探し出し、
なんとか説得して予約して、でも当日来なくてまた探して、
来たらきたで態度の悪さに我慢は限界に近く、
でもなんとか最後まで加工してもらうために非常に気を使って・・・、疲労困憊。

お茶を作るために工人を探すのは、どうしても必要なことで避けられないのだが、
その過程で、もう心も体もぐったりで・・・、『お茶どころではない』。

深刻な労働力不足の上に人件費の異常上昇もあって、工人たちのレベルが極端に下がっている。
考え方、態度、技術、全て。
『そんな要求するならもう来ない』、『来てやっただけありがたく思え』、そんな態度。
『他』では『そんな要求』さえされないのかと、個人的には恐ろしくなる。
優しく言えば調子に乗って手を抜く・要求あげる、キツく言えば途中放棄する・報復される危険がある。

こんな状況では、機械化を考えるのも当然だろう。
いや、機械化が極端に進むから、彼らもそうなっていくのか。。。
いやいや、どっちがどっちだかわからない。

彼らがそうなっていくのも理解できなくもない。
あまりにも貧富の差が激しすぎて、理不尽なことも多すぎて、不満と不安だらけで、希望も未来も・・・。

が、だからと言って、こちらにもこちらの事情がある、
こっちの茶葉を『他』のように扱われては困る。
そんなことされるぐらいなら。。。、だ。

 

そんなこんなで、おとん、すっかり疲れ果てて嫌気が指して、
お茶を作る喜びを感じるどころか、お茶を飲む気持ちすら失せている。

私はおとんと一緒にお茶が飲みたい。
ふたりで『ふあああー♪』とか「きゃあああ!!!」とかやりたい。
こうしてひとり、この家で作って飲んでいる今、気がつく。
できたてのお茶をふたりで初めて飲む時、どうだろうとどきどきしながら無言で蓋を取って、
次の瞬間ふたりとも思わず奇声を上げてしまっているようなお茶に仕上がっていたとき、
まるで世界中から祝福されているような、何ものにも代えがたい本当においしいお茶の時間だった。

 

外から見ると、こんなことになっているとは、想像つかないんだろうなぁ。
別にここだけの話しではない。
以前は私も、有名なお茶が作られている世界がこんなことになっているとは、想像していなかった。
いまだに、驚くこと(想像を絶する・理解できない状況になること)が山ほどある。

工人の状況は、なにも今に始まったことではなく、
おとん曰く『昔から似たような状況』だそう。
考えてみれば、そういう環境とそういう人々によって、各地の銘茶は作られてきたんだよなぁ。

だが、特にここ10数年、人々と人々を取り巻く環境の変化が異常に凄まじく、
60年以上この地で生きて、製茶を生業としてきたおとんにも、
明日の状況すら全く読めないと言う。


今日も私は、ひとりでお茶作っていた。
おとんは、昨日もいたが、茶葉には触っていない。
でも、いいんだ、それで。
こんな状況では、本当に無理もない。

あ、でも今日の殺青の時は、おとんが焼火していた!!!
もはや、貴重なシーンかも。。。

おとん、本当に毎日、何とかしようと工夫して、努力している。
他の場所では、もう何年も前に、とっくの昔に、あきらめていることだ。
でも、おとんと私は、あきらめなかった。
改善に改善を重ね、もっともっと好くしたいと、継続してきた。
しかし、それもどうやら、そろそろ限界みたい。

おとん、体力が落ちている。
だからか、気力も落ちていて、闘いのダメージが大きい。

お茶づくりは、闘いだ。
いろんな事との、闘い。
自分の心との、闘い。
昨日より少しでも好いお茶にしたいと、意のままにならず放棄したくなる時でも、最後まで懸命に闘う。
その先だけに、まだ見たこともない香りや味わいとの出会いが待っている。
そういったものに出会った瞬間、それまでの闘い全てが喜びに変わる。
闘わなければ、大興奮して手を取り合い飛び上がって喜び笑い合う、「あの瞬間」もない。
もしも闘うことを諦めたら、それまでとは変わってしまう。

闘い続けることの大変さは、誰よりも理解している。
そして、おとんが他の誰よりも、諦めずに一緒に闘い続けてこられた人であることも、感じている。
だから私は、おとんから闘う気持ちが消えてしまったとき、そこが終わりの「時」だと、感じる。

 

眠い。
話したいこといっぱい、だけど、本当に眠い。
明日も摘めそう!?
おお☆

おとんが、老夫婦の採茶工人を探し出した。
昨年も摘んでくれた。
摘みの標準に多少問題はあるが、もうそれも言うまい。
例え茶葉がどんな状態で届いても、大丈夫、私が全力でフォローする。
今の状況では若い人より信頼できそうだし、
古い付き合いなのでドタキャンはないだろうし、、、わからないけど。
そうか、それもあってホッとして、おとん少しご機嫌だったのかな。

 


南山の老茶樹。
先ほど木棚に並び終えた。
未来に残したかった樹たち。
でも、今となっては、それもどちらでも好い。
おとんの方が大切だ。
この茶樹たちが生き残る運命なら、必ず残る。
その貫禄の香りが、この家中に小さな竜巻のように上がっている。
このまま明日まで、私の出番はない。
それまでは、天と地に委ね、私は香りを聞き、茶葉の声を聞き続け、心に刻んでいく。

霧が出ている、明後日には雨になるかな。
起きたら、おじいの初代樹の後半を、摘むぞーーっっ☆
それで、今春最後かも。。。
自分にできる最大で望むっ☆

 

鮮葉が家に到着し、晒青し、揺青し、笊に広げ、木棚に並べ。。。、また揺すって、また並べ。。。。

今、こうしてお茶を作っている一瞬一瞬が、心から愛おしい。

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